第四話:義人


張蒼は王陵の恩義を片時も忘れなかった。

自分の身分が尊くなっても、王陵が我が父であるかのように仕えた。

『史記』には記されていないが、

王陵が呂后に排斥されて亡くなった時に葬儀を取り仕切ったのは張蒼であったのであろう。


また王陵夫人は夫の死後もしばらく存命であった。

張蒼は丞相であったが、休暇のたびに未亡人を見舞って食事を奉り、

その後でなければ自宅に帰ろうとはしなかった。


「士為知己者死」(士は己を知る者の為に死す)

張蒼はこの言葉の意味を深く噛みしめていたに違いない。


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