第五話:偃爲淫首


袁叔の策があたり董偃は武帝にも愛され、天下に董君を知らぬ者はいなかった。

諸国からは、遊技の為の犬馬や蹴鞠の名手、剣客などが董偃の元へ集まってきた。

董偃はいつも武帝の遊戯に従い上林苑(庭園)を馳せめぐり、闘鶏や蹴鞠を観、犬馬を競争させた。

喜んだ武帝は、長公主のために宣室(未央宮前殿の正室)で宴を開いた。

武帝は謁者に命じて董偃を宣室に案内させた。

すると、中郎の官にあって警護のために並んでいた東方朔が矛を捨てて進み出て言った。

東方朔 「陛下。董偃には斬罪に値する大罪が三つあります。

宣室に入れるなどもってのほかです。」

武帝 「・・・どういうことか。」

東方朔 「偃はひそかに長公主に侍っております。これが第一の罪。

男女の道を破り婚姻の礼を乱し、王朝の制度を傷つけております。これが第二の罪。

陛下は孔子の教えに従い聖なる世を築こうとなされておりますのに、

偃は華美を尊び豪奢を極め、犬馬の楽しみを尽し、欲望を満たし、

邪道・淫らな道を行こうとしております。偃は邪淫の首魁であり、これが第三の罪。

すなわち彼は国家の大賊であり、陛下にとっての大害であります。

昔、伯姫は貞節を守って焼死し、その行いはいまだに尊敬されております。

陛下はこのことをどうお考えですか。」

武帝 「・・・・・・・・・・・・。すでに宴席を設けてしまった。

お前の言わんとすることは解った。後で改めよう。」

東方朔 「いけません。そもそも宣室は、先帝がおられた正しき場所であり、

法で定められている官職の者しか入れないはずです。

淫乱の者を入れればその風が染み込み、いずれは反逆します。

これは歴史からみても明らかではありませんか。」

武帝 「わかった。ここでの宴は止めにする。場所を北宮へ移せ。」


こうして東方朔の諫言で、宴席は北宮へ移された。


後、武帝は自らの過ちを認め、東方朔へ黄金三十斤を与えた。

心を入れ替えた武帝は董偃を近づけなくなり、寵愛は日に日に衰えた。


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