栗子隧道 福島側 2005.5.2

 私はまた万世大路に立っていた。
去年とまったく同じ5月2日、dark-RX氏と。
今回の目的は、去年水没していて断念した福島側栗子隧道閉塞点を極める、ただそれだけであった。

■注意■
隧道内部は大変危険です。最悪死亡します。
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自己の責任によって行動してください。


入水準備をするdark-RX氏。
雪に刺さっているスコップは私が持参した。



いざ突入!
坑門付近は膝上までの水深と堆積した泥。
dark-RX氏はご覧の通りの装備なのでものともしなかったが・・・



私はというと、ネオプレン靴下が膝までしかなかったので、骨まで凍みるかというほど冷たかった。
ここの水温は数度しかないだろう。
隧道内に「うひゃー」「うひょー」という訳の解らぬ叫び声が木霊した。
踏破したい一心で泥を掻き分けながら早足で歩いた。



なんと、写真の地点で地面が盛り上がり、いきなり陸となった。
この付近は足をとられるほど舗装が大きく凸凹している。小さい隆起でも起こったのか?



後ろを振り返ると闇。
さあ、いくぞ!まだ見ぬ閉塞点へ。



水が上がり凸凹区間を過ぎると、山形側と同じようにフラットな路面状態となる。



ふと天井を見上げると、コンクリ巻きが破れて岩盤が覗いている。
ここもそのうち崩落するのか・・・?



あ!!山口屋さんレポにもあったゴムソールだ。



坑門からの光が弱くなったので不思議に思い振り返る。
隧道内は中央が高く両坑門部が低くなっていて、福島側から遠ざかるとついに坑門が見えなくなった。
栗子隧道の真ん中は通り過ぎたと思われるので、崩落は山形寄りで起こったようだ。


結構歩いたな、と思っていたら白い壁が。
あれが崩落点か!



ああ・・・
完全に天井が抜けている。
死んだ大蛇のようだ。
岩盤が抜け落ちた箇所は大穴が開いている。
向こう側へ、行けるのか・・・?
dark-RX氏と落盤の山をよじ登り見たものは・・・




奥羽山脈の内部。岩盤そのもの。
これはヤバイ・・・ヤバすぎる。直感でわかった。
そそくさと通過を試みるが・・・・


目が「点」になる。
こんな薄っぺらいコンクリで岩盤支えているのかよ!!!
うわぁぁぁあぁ!
おかぁさん・・・・まだ死にたくないよぉ・・・

今でもこの写真を見ると、心拍数が上がる。




心臓バクバク言わせながら岩石の上を進むと、ライトの先にもう一つの落盤が見える。
近い。
こんな至近距離で落盤が二つも起きるとは。
ふと、上を見ると・・・・



うわぁぁーもう勘弁してくれー
隧道いまにもペシャンコになりそうだよ・・・



dark-RX氏も突破。
dark-RX氏の乗っている岩石・・・同じ規模のものが落ちてきたら二人とも即死。
ここを越えるとすぐに完全閉塞点だ。




完全閉塞点はもの凄いことになっている。
岩盤は数段に渡りかなり深くまで剥離し崩落しており、再奥にはぽっかり穴が開いている。
死の空間。

穴まで登ってみようと画策したが、崩落面が不安定な上にまだ落ちてこようとしている頭大の岩石も多数あり断念。
直撃を食らったら確実に命は無い。



それでも悪あがきして少し瓦礫の山を登ってみた。
落盤と落盤の間にいるdark-RX氏。



怖い、怖すぎる。
足場が悪く、これ以上登れなかった。




これが私の限界最奥画像。
風は通っているが、やはり山形側の光は見えず栗子は完全閉塞である。



ここからだと、出口の光が見える。




瓦礫の山を登るdark-RX氏。
人の大きさと比べると、岩盤の巨大さがよくわかる。
崩落が起きれば人間など一呑みだ。



・・・
ヒトの四倍はある岩石が鎮座。
後ろの岩石群の崩落を止めている。



死の世界から帰還開始。



漢、dark-RX。
今、ここに生還す。



この後、二人は栗子隧道の扁額の目の前で一時間ほど歓談した。
踏破した余韻もあったが、去りがたい雰囲気であったからだ。
濡れた靴下を乾かしたり、雪を投げたり、ペットボトルやチョコレートを雪にさして冷やしたり、なぜかとても楽しかった。
時間がゆっくり流れた。


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