第七話:朝蠅暮蚊


蒙恬が捕えられた後、何も知らない弟の蒙毅は始皇帝(既に死んでいるが蒙毅は知らない)病気平癒の祈祷

を終え(第六話参照)、咸陽から帰って始皇帝巡業一行に合流した。

趙高・李斯らは胡亥即位後のことを考えて蒙家転覆を狙っており、

(まだ始皇帝は生きていることになっており、胡亥はまだ太子である。ややこしい^-^;;)

ここぞとばかりに胡亥に蒙毅の悪口を吹き込んだ。

「臣が聞きましたところでは、先帝(始皇帝)は太子(胡亥)さまを跡継ぎにするおつもりでしたが、

蒙毅がそれを邪魔して扶蘇を立てようとしたのです。

彼は不忠であり、主君を惑わす者です。死罪が妥当です。」

胡亥はこの虚言を信じ、有無を言わさず蒙毅を代の牢獄へぶち込んだ。

こうして蒙家の兄弟は揃って囚人となった。


胡亥が咸陽へ帰り二世として即位すると、

趙高らは毎日蒙家の悪口を言い、胡亥に蒙家への憎悪を植えつけた。

しかし、この動きを危ぶむ人間もいた。後に秦三世となる子嬰である。

彼は言葉を極めて胡亥を諌めた。

「誅殺忠臣而立無節行之人忠臣を誅殺し、節操無き者(=趙高ら)を取り立てる」とまで極言した。

が、胡亥はこの諫言を無視し、御史の曲宮に命じて代へ行かせ蒙毅に死を与えた。

蒙毅は曲宮に再考を願ったが、趙高らの意図を知っていた曲宮は蒙毅を殺した。


続いて蒙恬にも使者が送られた。

「汝の過ちは多い。それに汝の弟蒙毅は大罪を犯した。裁きはそなたにも及ぶぞ。」

これが胡亥の勅命であった。


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