第一話:燕雀安知鴻鵠之志哉


二人の名前、「陳勝呉広」という言葉は故事成語になっている。

物事の先駆けとなる、という意味である。

今回の人物紹介では、秦に反旗を翻し項羽や劉邦の先駆者となった陳勝呉広を紹介したい。



陳勝は字を渉という。陽城の人である。

漢代で陽城県は汝南郡と潁川郡にあり、陳勝の出身がどちらなのかはっきりしない。

史記索隠では「恐らく汝南郡であろう」としている。

彼と行動を共にした呉広は字を叔という。陽夏県の人である。

漢代では淮陽国に属していた。


陳勝は若い頃、日雇いの作男をしていた。土地を借りて耕作する小作農でもない、傭夫である。

まだ陳平の家のほうがましである。

ある時、陳勝は耕す手を止め、考えを巡らし畦で嘆息していた。

陳勝 「なあ・・・もし金持ちになってもお互いのことは忘れずにいような。」

仲間 「ははは、お前何を言ってるんだ?

俺たちは人に雇われて畑を耕す身分ではないか。金持ちなんかになれるかよ。」

陳勝 「ああ、ツバメやスズメのような奴等に、大鳥の志がわかるはずがない。」


言うまでもなく、故事成語「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや(燕雀安知鴻鵠之志哉)」の

元となった場面である。


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