第三話:阿諛


あるとき、文帝は人相見に愛するとう通の運勢を占わせた。

すると、「彼は貧窮のうちに餓死するでしょう。」との結果がでた。

文帝は不快になり、「わしは彼を金持ちにしてやる力を持っている。貧窮にはさせん。」と言い、

とう通に蜀の厳道にあった銅山を与え、自由に銅貨を鋳造する権利を与えた。

とう氏の銅貨は天下に流通し、とう通は誰よりも裕福となった。


文帝はあるとき、癰(よう。はれもの・おできのこと)ができた。

とう通はいつも口で膿を吸い取った。

文帝はあるとき気分がすぐれず、何気なくそばにいたとう通に問いかけた。

文帝 「この天下で、わしを最も愛してくれるのは誰だろうか。」

とう 「太子さま(のちの景帝)に及ぶ人がいるはずがございません。」


この問答があったあと、太子が見舞いにやってきた。

文帝は息子に癰の膿を吸い出すように命じた。

太子は吸い出しはしたが、いかにも気が進まぬ顔をした。

退出した後で、太子はいつもとう通が天子のために膿を吸い出していると聞き、内心恥じ入った。

そして、とう通の言動を憎んだ。


しばらくして文帝が死に、太子であった景帝が即位した。

文帝だけが頼りだったとう通の運命は決まったようなものだった。

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