竇姫は代王劉恒にかわいがられたが、側室であることには変わりがなかった。 しかし、王后は病死した。代で悪疫でも流行ったのだろうか・・・。 そういえば劉恒の母薄姫も代にいた頃、三年間も病で臥せっていたという。 その後、呂氏が誅され周勃・陳平・灌嬰ら、古兵の生き残り達は劉恒を帝に迎えた。 代王の他に、斉王劉襄、淮南王劉長が皇帝候補であったのだが、 斉王の外戚駟鈞は権力を好み悪辣、淮南王は横暴で王者の風に欠けると判断され、 結局外戚が温厚長者ばかりである代王が選ばれた。 劉恒は皇帝となると、皇太子を立てるように群臣に言われた。 竇姫の生んだ劉啓(後の景帝)が最年長であり、何の問題もなく皇太子に立てられた。 また皇帝の母薄太后が「皇后には竇姫を立てなさい。」と推薦してくれたので 竇姫は晴れて皇后となれた。 「竇姫の紀元前シンデレラストーリー」である。^-^;; 竇姫の父母は観津に葬られていたが、義母である薄太后が命令を出して 竇姫の父母を祀らせ墓守二百家を置かせた。 皇后擁立といいこの墓守の措置といい、どうやらこの嫁姑の仲は相当善かったらしい。 やはり、辛酸を舐め尽くしてきた二人はお互いを尊重しあったのであろうか・・・。 竇姫は幸せではあったが、気がかりなことがあった。 さらわれて奴隷として売り飛ばされ、 生死不明になっている弟・少君(名は広国。字が少君)のことである。 そのころ、弟は長安にいた。なんと、姉のすぐそばにいたのだ。 何という偶然であろうか。 竇広国はさらわれて売り飛ばされてから、奴隷として10あまりの家を転売され、 最後は陽の山中で炭作りをさせられていた。 ある夜、竇広国はほかの奴隷達よりも遅く仕事を終え、 いつも通り地べたに寝っころがって朝まで曝睡する予定だった。 しかし、先に寝ている奴隷達はみな重労働の疲労で曝睡していて、 広国の寝る場所すらない。 「おい、ちょっと詰めてくれないか。おーい?」 広国は大の字になって寝ている男を起こしたが、まったく反応がない。 彼は苦笑して少し離れた土の上に寝転がった。 「姉上はどうしているかな・・・。」 しかし、彼はすぐに眠りに落ちた。 その直後である。大音響とともに崖が崩れ、 あっという間に奴隷達は生き埋めとなった。 広国だけは少し離れた所で寝ていたので逃れることができた。 広国は友人が死に、自分だけが生き残った運命を不思議に思い、 自ら占ってみたところ、「数ヶ月後に侯となる」卦が出た。 広国は、「まさかな。俺は奴隷だしな。」と一笑に付した。 その後、広国は主人が長安に移住したのに従った。 こうして、天の配剤で姉と弟は長安に集まったのであった・・・ |