竇姫は趙の清河郡観津県の人である。 彼女の家は、貧しかったがまずまずの家柄だった。 竇姫には兄と弟がいた。 兄は建(字は長君)といい、弟は広国(字は少君)といった。 彼女が生まれた頃、張耳陳余や章邯、韓信らが次々と趙の地を攻略し 趙地域は荒廃した。 竇家はその余波を喰らい、やりくりできなくなった。 仕方なく竇姫の父母は借金をして生計を立てていた。 幼い竇姫は自分の家が借金で火だるまになっているとは露とも知らず、 弟と毎日外で遊びまわっていた。 竇姫は弟を連れて、おやつがわりの桑の実を採りに出かけた。 |
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竇姫 | 「あ!あそこにいっぱい実がついてるわ!」 |
竇広国 | 「ほんとだー。じゃ、ボクおねーちゃんのために あの木に登っていっぱい採るね。 ・・・よいしょっと(木登り中)・・・」 |
竇姫 | 「だいじょーぶ? あ、あ、きゃ〜〜!!」 |
竇広国 | 「うわあ あ あ あ〜〜〜。(ドスン) あたた・・・。 ああ!桑の実がみんなどっかに飛んでっちゃった・・・うぅ・・・」 |
竇姫 | 「だ、だいじょーぶ? ほら、お姉ちゃんの桑の実あげるから。一緒に食べよ。」 |
竇広国 | 「う、うぅ・・・。ありがと。 (もぐもぐ)・・・」 |
竇姫 | 「あらあら。お口が真っ黒よ! ふふふ。」 |
しかし、幼い竇姫の幸せは長くは続かなかった。 父母は、竇家はまずまずの家柄であることから、 竇姫を宮中に入れようと考えだしたのだ。 もう竇家の財政は破綻寸前であったからである。 結局、右も左も解らぬ竇姫は両親の勧めで宮中に入り 呂后に仕えることとなってしまった。 そして、とうとう出発の日が来た。 まだまだ幼ない弟は駅舎までついてきて、別れを惜しんだ。 |
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竇広国 | 「おねーちゃんはもう帰ってこないの?」 |
竇姫 | 「いいえ。呂后さまのお許しが出れば、また会えるわ。 もう、ここでお別れだけど、最後に一緒にご飯を食べましょう。 そして、姉さんが少君の髪を洗ってあげる。 ・・・ううっ・・・・・・」 |
竇広国 | 「おねーちゃん・・・。」 |
こうして竇姫は別れを惜しみつつも長安に向けて旅立っていった。 その後、竇家は破産し、竇広国は借金のかたにさらわれて売り飛ばされてしまった。 父母は可愛い末子の行方をまったく掴めず、泣き暮らした。 そのためか、夫婦そろって早死してしまったという。 残された長男竇建は途方に暮れ、姿を晦ました。 しかし竇姫は何も知らず、ひたすら真面目に呂后に仕えていた・・・ |