第四話:仮病袁叔は、董偃が武帝に謁見できるよう策を練った。 長公主に仮病を使わせ、武帝に会わないようにさせたのだ。 武帝は心配して、何か願い事はあるか、欲しいものはあるか、と伯母のことを気遣った。 長公主は袁叔の策の通りにこれを辞退して言った。 |
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長公主 | 「わたくしは幸いにも公主の列に連なり、賜物や領地を頂戴し、 そのご恩は天より高く、地より重く、死んでもお報いできません。 わたくしが死ぬ前に、陛下をわたくしの山林(所有していた園)へおいでいただき、 すべてを忘れて陛下を楽しませてさしあげたらと念じております。 この願いを果たしてから死ぬのなら、何の悔いもありません。」 |
武帝 | 「太主よ、何を心配しておられるのです。病は治りますぞ。 全快の暁には、群臣どもを引き連れて太主のお世話になるでしょう。」 |
しばらくすると、長公主は病が治ったと称し、武帝に謁見した。 武帝は喜び、銭千万を与え共に食事をとった。 数日後、約束どおり武帝は長公主の山林を訪れた。 長公主は自ら料理し、蔽膝(賎しい身分の者が着けるという。エプロンの類?)をしめて武帝を案内した。 着席すべき座が決まらぬうちに、武帝が言った。 |
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武帝 | 「太主のご主人にお目にかかりたいのだが。」 |
武帝は董偃のことを知っていたのだ。 すると長公主は、かんざしや耳飾りを外して裸足になり殿を下りて頓首して言った。 |
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長公主 | 「わたくしの行いは醜悪です。陛下に背き誅殺されるべき身です。 しかし、どうかあの人だけは法にかけないでくださいますようお願い申し上げます。」 |
武帝は、伯母の性格を良く知っていた。即座にこれを赦し、起つように命じた。 長公主はかんざしをつけ直し、くつを履いて自ら董偃を連れてきた。 董偃は料理人の格好をしており、長公主に案内されるがままに殿の下にひれ伏した。 長公主が董偃を紹介すると、武帝は董偃に衣冠を与え殿に上がるよう命じた。 どうやら武帝は董偃が気に入ったようで、機嫌が良かった。 その日董偃は尊ばれ、名で呼ばれず「主人翁」と呼ばれ、皆酒を飲んで大いに楽しんだ。 長公主は武帝に許しを得てから、群臣たちに金銭・絹を下賜した。根回しですね こうして董偃は武帝にも気に入られ、名は尊ばれた。当然、長公主との関係も暗に認められた。 そして、董偃は武帝の遊びのお供をして宮殿にも出入りするようになり、さらに尊ばれていく。 |