第二話:董君


長公主は、董偃を読書・算術・馬の鑑定術・馬術・射術の師につかせて学ばせた。

そして自身でも賢人の書いた書物や伝記を勧め読ませた。

董偃は十八歳になると冠礼(日本流だと元服か)を行い、

長公主の外出の際には馬車の轡を取り、邸内においては長公主に近侍し閨を共にした。

性格はいたって穏やかで人を愛し、長公主の計らいで諸公とも付き合いがあった。

その名は都で評判となり、人々は董君と呼んだ。


長公主は董偃が可愛くて仕方がなかったらしく、ますます財を散じて士と交際させ、

中府(財務を掌る)に「董君が使う財が、一日に黄金百斤(25Kg)・銭百万・帛千匹に達したときは

報告せよ。」と命じた。

よく意味が判らないが、好きなだけ使わせろということだろう。


この有様を見て、ひとり董偃の未来を危惧する友人がいた。

袁叔(袁おうの甥)である。


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