第一話:十三歳


董偃という人はどこの出身かわからない。

幼い頃から母親と一緒に珠玉を売る仕事をして、方々を歩いたという。

父とは死別したのか、事情があって離別したのか。それとも私生児だったのか。

ともかく、董偃の母は美人だったらしく、董偃もまた美少年であった。

何の伝手があったか判らないが、董偃の母は長公主(館陶公主とも)の家に出入りするようになった。


当時、長公主は夫であった陳午に先立たれ寡婦暮らしをしていた。

歳は五十過ぎであったが、活発な女性であったらしい。

左右のお付の者もそれをよく知っていて、

密かに長公主が好みそうな男子を探していた。

出入りしている女商人の董氏の息子が美貌であると知ると、

長公主にこの少年を薦めた。


ある日、長公主は董氏に「偃をよこすように。」と命じた。

董偃がやってくると、長公主は一目で気に入りそのまま邸内に留めて引き取った。

長公主は「お前の母親代わりになって世話してあげよう。」と言って偃を可愛がった。


この時、董偃十三歳であった。


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