第三話:讒言


劉邦らが三秦を平定し、殷王司馬を降すとはるばる楚から陳平が投降してきた。

劉邦は陳平の才能を見抜き、都尉に任じ度を越えて重用した。

劉邦の車に陪乗させ、軍を監督させた。

当然古参の将は面白くなく、讒言されることとなった。

古参の将軍達の代表に推されたのが周勃と灌嬰であった。

劉邦は周勃を信頼していたのでこれには驚いた。

周勃 「陳平は美丈夫であります。

しかしながら冠の飾りのようなもので中身が伴っておりません。

陳平は昔兄嫁と姦通していたという話もあります。

また魏王に仕えたものの用いられず楚に走り、またわが漢に投じたのです。

漢王さまは陳平を高官に任命し軍を監督させていますが、

臣が聞くところによりますと、陳平は賄賂を受け取っているとのこと。

賄賂の多い者には高い地位、少ない者には悪い地位を与えているとのこと。

これは反覆常なき叛臣と言えます。

どうかこの事実をお察しください。」

劉邦 「その話は真実か・・・。」

周勃 「間違いありません。」

劉邦は陳平を疑った。

周勃も嘘をついたわけではなく、賄賂も事実であった。


劉邦が項羽と違ったのは、本人に激怒するのではなく、

陳平の推薦を行った魏無知を呼び出したことであった。

魏無知は陳平を弁護し、また陳平も賄賂の事実を認めた。

ただし、賄賂は全て保管しており計を遂行するための資金であったと釈明した為、

逆に劉邦は資金を与えなかったことを詫び、陳平を護軍中尉に任命し全ての将軍を監督させた。

周勃も灌嬰も諸将ももう何も言わなかった。

劉邦がそこまで重用するには訳があると気づいたのであろう。


その後、漢軍は彭城を攻めたが大敗し、陽に籠もった。

周勃は敖倉の守備についた。

敖倉には穀物が蓄えられており、ここを奪取されると全軍が飢える重要な場所であった。

当然項羽は敖倉と陽を結ぶ甬道を攻め続けた。

周勃はよく防いだが、防ぎきれず陽は飢えた。

幾度か劉邦は軍を捨てて遁走したが、周勃は度々敖倉を守備し最終的には兵糧を守りきり、

彭越の活躍もあり楚軍は飢えた。

劉邦は侯公を遣わして楚漢は和睦した。


嶢関・敖倉と周勃は重要な場所の守備に就き、讒言のお咎めもなく、

劉邦に全幅の信頼を置かれていたことがよくわかる。


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