第三話:人間叔孫通


叔孫通は劉邦が儒者を嫌っていると知り、儒者の服を捨てた。

替わりに劉邦や叔孫通らの故郷である楚国風の短い服を着て、劉邦を喜ばせた。


叔孫通は元々高名な学者儒者であり、弟子が百余人いて行動をともにしていた。

叔孫通は劉邦配下となったが、弟子をひとりも推薦せず、

推薦するのは盗賊・ゴロツキ・武勇の士ばかりであった。

これを見た弟子達は陰で先生の悪口を言った。

「私達は先生に弟子入りして数年経つ。幸いにも漢に帰属することができたが、

先生は私達を漢王に推薦するどころか、悪党どものために口をきいておられる。

何ということだ!!」


叔孫通はこの悪口を耳にすると弟子たちを集めて言い聞かせた。

「漢王さまは戦場で矢弾の中、天下を争っておられるのだ。

君たちは漢王とともに戦闘できるのか? できないであろう。

だから私は敵の大将を斬り旗を奪う悪党や豪傑などの勇士を漢王に推薦しているのだ。

まあ、もう少し待ちたまえ。決して君たちを忘れているのではない。」


こうして叔孫通は謎めいた言葉で弟子たちを黙らせた。



その後、漢王劉邦は叔孫通を有能の士と認め、博士に任命し稷嗣君という称号を与えた。

秦、楚、西楚、漢と渡り歩き、二度までも博士に任命された。

しかし、彼の生き様を見ると、変節の士とは言いきれない。


彼は楚漢の動乱には儒学は役立たないと知っていたのではないだろうか・・・。


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