第二話:游侠討滅


当時、游侠(ヤクザの親玉。人の為なら命を捨てた)が幅をきかせ、その勢力は一つの州に渡り、

太守や諸侯でもその勢いを挫くことができなかった。

彼らは、仲間に殉じ法を破る為、公の立場から見れば国を乱す滅すべき存在であった。

中でも符離県の王孟、陳県の周膚、済南郡のかん氏は勢力が強く、

景帝は彼らを誅滅すべくそれぞれ太守を送り込んだ。


しつ都は済南郡太守に任命され、かん氏誅滅を任された。

かん氏は一族を含めて三百余家あり、済南の豪族でもあった。

しつ都は赴任すると、すぐさまかん氏とその取り巻き、他の游侠の首魁を誅滅した。

その有無を言わせぬやり方に、済南の豪族どもは皆震えあがった。

一年もすると郡では路上の落し物を拾う者もなくなり、

済南郡周辺の郡守らはしつ都を上官の如く畏れた。



しつ都の人柄は、勇敢で高い気概を持ち、公平廉潔であった。

決して自分宛の書の封は開かず、ご機嫌伺いの贈物を受け取らず、

私的な請願や依頼に耳を貸さなかった。

普段から、「自分は親の意思に逆らって仕官した。職をまっとうする為に命を投げ打ち、

節義に死すべき身だ。決して妻子を顧みることはない。」

と公言していたという。


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