第一話:直諫の士


しつ都は河東郡楊県の人である。

文帝に仕え、郎(侍従・護衛官)となった。

経験を積み、景帝のときに中郎将(近衛兵隊長。郎中令の属官)となった。

景帝に向かって遠慮会釈もなしに諫言し、朝廷では面と向かって大臣らを責めやりこめた。


ある時、しつ都は景帝のお供をして上苑林に狩りに出かけた。

景帝の愛妾であった賈夫人が厠に入ったとき、猪が現れてその厠へ入り込んだ。

景帝は焦りしつ都に目くばせして猪を追っ払えと命じたが、しつ都は命令を完全に無視した。

仕方なく、景帝は武器を取って賈夫人を救いに行こうとした。

するとしつ都は景帝の前に平伏して進行を妨げ、言った。


「一人の夫人を失えば、もう一人の夫人がお側に侍ります。

天下になくてはならないものは夫人ではなく、陛下です。

陛下がご自分の体を軽んじられるのならば、

ご先祖の廟や太后さま竇太后は誰が守るのですか。」


しつ都の直諫を聞き、景帝は黙って席に戻った。

幸いにも、猪は去り賈夫人も無事であった。


のちに一部始終を聞いた竇太后は感激し、しつ都に百斤の金を与えた。

景帝もまた金百斤を下賜した。

景帝や竇太后はしつ都を重んじるようになった。


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