第三話:信頼


檄をつくりとう通を召喚したものの、彼は恐れてやってこなかった。

と嘉はとう通を斬罪に処すことにした。

とう通は恐懼して文帝のもとへ行き泣きついた。

とう 「丞相は臣を斬るつもりです。」

文帝 「お前はだた行けばよい。

私はすぐ人をやってお前を呼び戻すから。」


とう通は泣く泣く丞相府に出頭すると、冠を脱ぎ裸足となり額を地面につけて 申と嘉に詫びた。

と嘉は坐ったまま素知らぬ顔をして答礼もせずにとう通を責めた。

「そもそも朝廷は高祖(劉邦)さまのものである。

おまえが臣の分際で殿中で戯れるとは大不敬で斬罪にあたる。

こやつを引っ立てて直ちに斬れ。」

とう通はひたすら叩頭して詫びたが赦されなかった。額が血まみれになった。


文帝は申と嘉がとう通を懲らしめた頃合をはかって使者を遣わせ、とう通を召し返した。

と嘉には「あれはわしのなぐさみ相手であるから赦してやってほしい。」と伝えさせた。

とう通は宮中に戻ると文帝泣いて言った。

「臣はもうすぐ丞相に殺されるところでした。」



と嘉の剛直さと、文帝からの信頼度が窺える逸話である。


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