第三話:陳余との潜伏A
陳の街に着いた二人は陳の小さな里(り)の門番の職にありつき、生計を立てていくこととなった。

(里というのは秦政府の行政単位の一つで、県>邑>里という風に、里は行政区の最小単位だった。


しかしここで、なぜ犯罪者として追われていた二人が就職できたのか?という疑問がわいてくる。

私が考えるところでは、彼らは任侠の大親分としても有名だったので彼らには弟分がたくさんいて、

その弟分の斡旋で就職ができたんじゃないのだろうか・・・といったところです。(本当かよ^^;)



私の意見はいいとして、

門番になりすました二人が門の両脇にそれぞれ座っていると、アブナイ上司が来て、

「お前ら、なにをぼーっとしているんだ?職務中だぞ。

叩きのめさないとわからないみたいだな!へっへっ」

と、どなり散らし、「おい、若い方のおまえ、俺が根性叩き直してやる!」と陳余を指名した。

「今、争うのはまずいぞ」と思った陳余は素直に前へ出て跪いた。

上司は「おうおう。分かってるならなんで最初からちゃんとやらないんだ?えぇ?」

と、ムチで陳余を叩きだした。

陳余は「いたたたっ!!・・・くそぅ。ぶっ殺してやる」と思い、

立ち上がってそのヤバイ上司に反抗しようとした。

しかしその時、張耳が歩み寄り、陳余の足をそっと踏んだ。

陳余は、はっと気づき、黙ってムチを受けた。



その上司がいなくなった後、張耳は門の傍に生えている桑の木の下に陳余をつれて行き、

「おい。お前がこんなところで小役人に反抗してくだらん罪を作り、死罪にでもなったら、

最初に我々が交わした約束はどうなる。

わずかな屈辱に遭ったからといって大志を捨てるのか」と怒った。

陳余は、

「本当にすまないことをした。あなたがいなかったら今、私はくだらぬ死を迎えていただろう。

本当にすまなかった」と謝った。

(このエピソードから、張耳は度量が広いが、陳余はキレやすいことがわかる。自尊心が強いってことかな)



そのころ、秦の始皇帝は「あの女たらしどもはまだ捕まらんのか!」といらいらしだし、

遂に「あの二人を捕まえたら、懸賞金はたんまり出す。一生遊んで暮らせる金だ」

という勅命を出す。

ところが、張耳・陳余の二人はいっこうに捕まらない。

なぜなら、

その勅命を村中に廻していたのは、門番の張耳と陳余だったからである。(すごすぎて笑える^^)



そうこうしているうちに、始皇帝が死んだ。

秦は中国史上に残る、ひどい政治をした帝国である。人民の恨みは頂点に達していたに違いない。

始皇帝の統治能力で反乱の芽を抑えていた秦帝国は揺らぎ始め、遂に大反乱が起きる。

それを見逃す張耳と陳余ではなかった。

「これで、犯罪者じゃなくなる。世間に張耳・陳余の名を知らしめるのはこの時以外にない!!」

と・・・・・・

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