第四話:反乱軍首脳へ、そして離反@ |
遂に秦帝国に対する大規模な反乱が起きた。首謀者は楚に住む陳渉(ちんしょう)という人物だった。 ここで陳渉という人物に触れなければならない。 彼は無名の農民だった。しかし彼は秦政府の命令で辺境の防備につく人間の一人に選ばれた。 兵士要員は陳渉を含め900人くらいとなった。みな、働き盛りなのに故郷を離れ、 誰しもが、「一体、ウチの畑は誰が耕すんだろう?これでは、罪人を作りだす為の法律ではないか」 (耕す人がいない→収穫がほとんど無い→年貢が払えない→罪人になる・・・・T-T) と誰しもが秦の政治を憎んだ。 彼ら900余人は、任地に向かう途中、宿県の大沢郷という所で大雨に遭った。 川はあふれ、嵐が荒れ狂った。 大雨が通り過ぎると川が氾濫し道は跡形も無くなり、前へ進める状況ではなかった。 秦の法律では、所定の期日に間に合わなかった場合は死罪だった。 彼ら900余人は、行くも死罪、返るも死罪、留まるも死罪、となってしまった。 彼らは窮した。そんな時、陳渉が言った。 「我々は、行くも死。逃げるも死。どうせ死ぬなら武器を持って立ち上がろうじゃないか!」 ・・・・しかし、反応はイマイチだった。 「これはイカン。もっと煽らないと!」と思った陳渉は、 「すでに、王になるのも、侯になるのも我々の自由ではないかっ!」 と叫んだ。皆はどよめき、ついに反乱に踏み切った。 その後は連戦連勝。勢力を拡大し秦政府を恐怖の底に突き落とした。 陳渉は穀物の豊かに実る地、陳の町を本拠地に定めた。 そう、陳の町といえば、張耳と陳余が隠れていた町である。 二人はすぐに、陳渉に面会を申し込んだ。 陳渉も二人が名士であることを知っていたので、大喜びで面会し二人を重職につけた。 面会の後暫くすると、陳の町の代表者達が、 「陳渉さま。あなたは、暴虐な秦を半ば討ちました。我々の祖国、楚を再建し、王になって下され」 と陳渉に言った。 陳渉はこの時かなり調子に乗っていたので、二つ返事で請け合ってしまった。 張耳と陳余は「こっ、これはイカン」と思い、陳渉を諌めた。 「あなたはまだ陳の町に着いたばかりではないですか。秦を滅ぼしたわけでもない。 今すぐに秦の首都咸陽に向かい行く先々で味方をどんどんつくり、秦を滅ぼしてから王、 いや、皇帝になられるべきでしょう。 今、あなたが陳の町たった一つだけで王の位に就いてしまえば、 おそらく天下はばらばらになるに違いありません」 しかし、陳渉は聞き入れなかった。 張耳と陳余は、「もう、こいつはダメだな。滅ぶのも時間の問題だ。 独立しよう」と相談し、再び陳渉の前に行き、 「私達二人は以前、北方の地の趙に住んでおりました。軍勢をお貸しくださるなら、 いますぐに兵を発し、趙を攻略して見せましょう」と言った。 陳渉は、「そうか。あんた達が行ってくれるなら心強い」と請け合ってしまった。 内心、二人はほくそえんでいた・・・ |