第五話:反乱軍首脳へ、そして離反A
陳渉は、張耳・陳余の献策を聞き入れ、趙へ3000人の軍勢を向けることにした。

しかし陳渉は、友人の武臣(ぶしん)を派遣することにし、張耳と陳余は武臣配下の部隊長にされた。

「おいおい、俺達は武人じゃないぜ。しかも武臣の手下ってのもムカツクなぁ。」

と思ったが、そこは弁舌巧みな二人。あっという間に武臣の軍師になってしまう。

二人は「戦争でなく、外交で趙を手に入れよう」と思い、武臣に進言した。

進言の内容は檄文形式で、

「秦帝国は、大変暴虐な政治を行いました。天下の人民の恨みは積もりに積もっています。

そこで陳王(陳渉のこと)が秦に対し反旗を翻されました。今こそ、秦が滅びる時です。

趙に住む皆さん。この時を逃してはいけません。

私達と一緒に秦を滅ぼし、功績を打ち立て、我々は大名になろうではないですか!!」

というものだった。

武臣はこの檄文を読み「あんたがたの才能は素晴らしい!」と採用し、趙にこの文をばらまいた。

趙の豪族・豪傑たちは、「この檄文は真実を語っている」と思い、みな武臣の下にはせ参じた。

な、なんと武臣の軍は数万人にふくれあがり、武臣は勝手に武信君と名乗った。

その軍勢で趙の地を攻め、10の城を落とした。しかし范陽(はんよう)の知事は城を固守し降伏しなかった。


しかし、(かいつう)という人物が知事に降伏を勧めた。

「あなたは、秦の官吏です。今、情勢は秦滅亡に向かって急進しています。

このまま范陽の城を守っていても、范陽の民が反乱を起し、あなたは殺されるでしょう。

それほど、秦は憎まれています。

あなたは、今すぐ武臣殿に降伏し、土地を与えてもらうべきです。

私が武臣殿と会見し、あなたが大名になれるよう説得しましょう」

と説得し、降伏することを認めさせた。

通はさっそく武臣と会見し、

「いまあなたが范陽の知事の降伏を認め、命を助け、彼を侯に任じるならば、

これから先、戦わずして趙の全土を手に入れられます。

みな、あなた方が来ることを恐れています。殺されるんじゃないか、と恐れています。

でも、ここで范陽の知事を赦し、大名にしてやれば、皆安心して次々と降伏してくるでしょう」

と言った。

武臣は「おおっ。なるほど。」と感心し、通を范陽に返し知事を大名にしてやった。

この話を聞いた趙の知事達・豪傑達は、戦わずして次々と武臣に降伏した。


張耳・陳余は大成功したのである。


そして、張耳と陳余は、遂に本心を武臣に語った。

「陳王さま(陳渉のこと)は猜疑心の強い方です。あなたは趙の地で大成功を治められ、

すでに陳王さまに警戒されていましょう。

今、陳渉さまに戦勝報告に行けば、間違いなく捕われ殺されます。

あなたは、もう独立するしかありません。趙王の位に就いてくだされ」

それを聞いた武臣は震えあがった。が、それ以外に策はないとも思い、彼は趙王になった。


ついに、風雲児陳渉から離反したのである・・・・・

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