第二話:以姉為美人故也石家は代々趙に住んでいたが、秦によって趙が滅ぼされたとき河内郡温県に移住した。 石奮の父は早くに亡くなり、母は病で失明していた。そのため家は貧しかった。 石奮の姉は瑟(こと)を弾いて収入を得、家計を助けた。 石奮はまだ十五歳であったが、劉邦が項羽と争っていたときに たまたま近くを進軍していた劉邦に身を寄せ、小役人となって劉邦の側近くに仕えた。 劉邦は石奮と語り、その恭しさを愛した。 あるとき、劉邦は石奮に何気なく聞いた。 |
|
劉邦 | 「お前には誰か身寄りがあるのか?」 |
石奮 | 「母がおりますが、不幸にも失明しております。 家は貧しく、姉は瑟を弾くのが上手です。」 |
劉邦 | 「お前はわしにいつまでも仕える気があるか?」 |
石奮 | 「一生懸命やらせていただきます。」 |
劉邦 | 「そうかそうか。はっはっは!」 |
劉邦は石奮の姉を召し出して側室とし、美人の位を与えた。 そして石奮を中涓(賓客の接待や文書の取次をする)に任じ、謁見と上書のことを任せた。 姉が劉邦に寵愛されたため、石家は長安城内の戚里(皇室の姻戚が住んだ)に移された。 すべては姉の存在のお蔭であった。 |