第三話:騙される


瑯邪王となった劉沢は田生と共に国に向かった。

田生は劉沢に急いで函谷関を出るよう勧めた。

ちょうど劉沢の一行が函谷関を出た頃、

呂后は劉沢に王位を与えたことを後悔し、使者をだして後を追わせて引きとめようとした。

使者が函谷関まで来ると、劉沢は出関した後であったので引き返した。

田生の読みはあたった。



劉沢が瑯邪王になって二年で呂后が死んだ。

隣国斉では呂氏誅滅の兵を挙げようとしていたが、呂氏を妻に持つ劉沢の動向が不明であった。

そこで劉沢をおびき寄せて軟禁しようと企み、使者にこう言わせた。

「呂氏が乱を起こしたので、斉王(劉襄。劉邦の長男劉肥の子)は兵を挙げこれを討伐します。

しかし斉王は年少で戦に精通しておりません。

斉王は、国を挙げて瑯邪王さまにお任せしたいとのことです。

大王は高帝の時からの武将で、戦に精通しておられます。

し(斉の都)までおいでいただき、斉兵を率いて西進し呂氏の乱を平定してくださいませ。」

劉沢はこの言を信じ、急ぎ 臨しへ向かった。


斉王は劉沢を軟禁し、瑯邪の兵をことごとく出動させた。

劉沢は欺かれ帰国することもできなかったが、策を思いつき斉王に言った。

「斉王は高帝のご嫡孫であり、呂氏亡き後帝位に就くべきであります。

今、朝廷の諸大臣は誰を皇帝にするべきか決めかねています。

私は劉氏の中で最年長でありますゆえ、必ず私を待って大臣達は計を定めるでしょう。

斉王が私をここに留め置いても何の足しにもなりません。

私を関中に送り込み、事を謀らせるにこしたことはありません。」

斉王は劉沢の言をもっともだと思い、車を連ねて劉沢を送り出した。

斉は劉沢を送り出すと、呂氏に対し宣戦布告した。



劉沢は初めから斉王劉襄など帝位に推すつもりはなかった。

騙されたら、騙し返す。そう思っていたのだ・・・


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