第五話:温情


大臣たちは劉長を棄市(市場にて処刑)することを上奏した。

文帝はたった一人の弟を殺すに忍びなく、大臣たち法を緩めるよう依頼した。

しかし丞相張蒼らは、「漢の法に照らし合わせると死刑以外ありえない。」との回答をした。

文帝は窮し、「死罪を赦し、王位を剥奪せよ。」と命令した。

丞相らはこれには逆らえず、

「蜀郡厳道県のきょうの宿場に流し、

夫人らと共に住まわせ、県に命じて家を建てさせ、

食料はすべて支給し、薪・野菜・塩・炊事具・食器・

寝具などを供給するようにいたします。」と上奏した。

文帝はさらに命令し、

「さらに毎日肉五斤、酒二升を与えるように。

また劉長の美人才人(女官)のうちで

寵愛を受けていた者十名も一緒に住まわせよ。」とした。

そして劉長謀反に加担した者すべてを誅殺した。

劉長は荷車に乗せられ扉に封をされ、県から県へ護送された。


これを見た袁おうは文帝を諫めた。

おう 「淮南王が驕慢になられたのは、陛下が王のために厳格な相や師傅を

置かなかったからです。

淮南王は剛情なお方です。

王は自尊心を打ちのめされ、旅路に病死されるのではないかと臣は案じます。

陛下に『弟を殺した』という悪評が立ってしまうこと、それだけが心配であります。」

文帝 「わしはただ淮南王を懲らしめてやろうと思っているだけだ。

王が悔い改めれば、すぐに呼び戻すつもりだ。」


文帝は軽く考えていた。袁おうの予感は的中する・・・


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