第一話:大商人


韓の陽てきというところは大都市だったらしく、漢代には人口109,000人を超えていたという。

その陽てきには呂不韋という商人がいた。

彼は街でも屈指の大商人であり、中国各地を歩き回り、安い時期に物資を買い込み、

高くなる時期に売りさばき、莫大な資産を蓄えていた。


ある時、彼は商用で趙の都・邯鄲へ出かけた。

彼は商人仲間から面白い情報を聞いた。

強勢を誇る秦の太子の息子が、邯鄲で人質生活をしているというのだ。

当時、王家の人質などは沢山いただろうが、呂不韋は感じるものがあったのか面会を申し入れた。


秦から来ていた王孫は名を「楚」といい、秦太子の十数番目の子であった。

残酷な言い方であるが、秦にとっては捨石であった。


「楚」は後の秦の荘襄王であり、始皇帝の父でもある。
『史記』では子楚(子は敬称)と表記されるが、本名は「異人」だという。後に「楚」に改めたという。
経緯は後ほど。



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