第五話:新語


太中大夫に任命された陸賈は、折をみては劉邦に孔子の『詩経』『書経』を説き、褒め称えた。

劉邦は大の儒者嫌いだったので陸賈を罵った。

劉邦 「わしは馬上で天下を取った。詩書には用は無い!」

陸賈 「馬上で天下を取ったとしても、馬上で天下を治めることはできません。

殷湯王や周武王は反逆で天下を取りましたが、順道で天下を保ったのです。

文武を兼ね備えることが天下を保つ秘訣です。

呉王夫差や晋の智伯は武を用い尽くして滅びました。

秦は刑罰を重んじ、改めなかった為に滅びました。

もし秦が仁義を重んじ古聖を見習っていれば、

陛下は天下を取ることはできなかったはずです。」

劉邦 「・・・・・・。

ま、まぁ、お前の言うとおりだ。

それではわしの為に、なぜ秦が天下を失い、なぜわしが天下を得たのか、

また、古の国々がどうして失敗し成功したのか著述してくれないか。」


陸賈は国家の存立・滅亡の兆しを述べ、十二篇の書を著した。

一篇完成し献上されるたびに劉邦が褒め称えないことはなく、群臣も万歳を叫んだ。


書は『新語』と称され、当時のままではないが現在まで伝えられている。


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