第三話:李廣材氣、天下亡雙李広は上谷郡の太守となってから、しばしば匈奴と戦った。 彼の才気は都に止まらず塞外まで響き渡ったが、 共に呉楚七国の乱を戦い平曲侯に封じられ典属国(異民族の降伏、使者を扱う)となっていた 公孫昆邪が泣いて景帝に言った。 「李将軍の勇才は天下無双であります。 しかし彼は自らの力を恃みすぎ、匈奴兵と勝敗を争っています。 臣は、彼を失ってしまうことになるのではないかと心配なのです。」 景帝はこの諌めを聞き入れ、李広を上郡太守に転任させた。 その後、上郡に匈奴が侵入した。 景帝は中貴人(宦官)に命じ、李広に従って兵を訓練し匈奴を撃つよう命じた。 あるとき中貴人が数十の騎兵と共に馳せていたところ、三人の匈奴兵と遭遇した。 中貴人は、多勢に無勢だと思い安易に攻撃を仕掛けたが、相手の弓技が優れていた為 全滅寸前となり中貴人は負傷し、李広の陣へ逃げ込んだ。 李広はその三人は鷲を射る技能者であると見抜き、自ら百人を率い数十里追い 二人を射殺し一人を捕らえた。李広の予言どおり、鷲を射る者であった。 丘に上り周囲を見ると数千の匈奴騎兵がおり、李広の騎兵が動揺した。 李広は、 「今我々は本隊から数十里離れており、逃げ帰れば必ず追撃され全滅する。 逆にここに留まれば、匈奴は我々を囮兵だと疑い攻撃しないだろう。」 と言い、匈奴軍から1Kmほどの地点まで軍を進め、兵を馬から降ろし、鞍を外させた。 兵たちは「今急襲されればひとたまりもない。」と李広を責めた。 李広は、「奴らは我々が逃げ去ると思っているだろうから、逆に逃げないことを示してやり 囮であると思わせるのだ。」と言って兵を落ち着かせた。 すると、白馬に乗った匈奴兵が李広軍を監視しに近づいてきた。 李広は十数騎を率いて突出し、白馬の将を射殺した。 陣に戻ると再び鞍を外し、皆の馬を自由にさせ、兵を休ませた。 匈奴兵は李広軍に伏兵があり、このままでは夜襲されるのではないかと疑い夜半に兵を引いた。 李広は朝になって自陣へ帰還できた。 人々は改めて李広の胆力才気に驚愕し、 また匈奴に対する知識の深さに驚かされたのであった。 公孫昆邪 先祖は匈奴人である。 |