第一話:成紀李氏李広は隴西郡(武帝以後は天水郡)成紀県の人である。 成紀県は長安から直線距離で300Km以上離れており、 付近では紀元前6000年頃の遺跡が発見されており、古くから文明が栄えた地域であったようだ。 また、秦王朝は天水郡が発祥の地であり、祖先たちは徐々に渭水を下って来たらしい。 李広の先祖は秦の祖先たちと一緒に咸陽に下ってきたと思われ、 李氏は咸陽西郊の槐里に住み着いた。 李氏は代々射術を伝えてきた。 李広の数代前は李信といい、若くして秦の始皇帝に仕え、燕を滅ぼす戦に参加した。 勇敢であり、始皇帝を暗殺しようと企んだ燕太子丹の首を得た。 楚を滅ぼす戦いでは大敗し、秦のほぼ全兵力を対楚戦に引き出すはめとなり、 王翦と交代させられた。 その後、楚漢戦争での動向は不明だが、李氏は先祖の地成紀県へ戻ったらしい。 隴西では李氏は名族となっていたらしく、 李広は従弟李蔡と共に前漢文帝に仕え名を揚げることとなる。 |