第六話:楚を滅ぼす


部下 「王将軍のねだり方、度が過ぎると思いますが。」

王翦 「そう見えたか。ははは。

だが、それは違う。

秦王さまはな、粗暴な性格で人を信用なさらぬ。

今、その秦王さまがわが国の兵を全てわしに預けている。

良田をねだり子孫の財産にしたいとでも言って信用を固めておかなければ、

王さまが猜疑心を起こされたとき、わしらはどうなるのだ。」


王翦は東進し李信と交代して楚討伐の指揮官となった。

楚では、王翦がさらに多くの兵を率いてやってくると聞き、全土の兵を動員して防ぐことにした。

それを知った王翦は、逆に防御を固め決して出撃しようとしなかった。

楚の兵は王翦軍を罵り何度も戦いを挑んだが、王翦は出撃を許さなかった。

そして毎日兵卒を湯に入らせ、美味い食事や飲料を振舞って心を落ち着かせ、

自身も兵卒と一緒に食事した。


しばらくしてから王翦は兵卒の様子を探らせた。

王翦 「兵たちは陣中で遊びごとをしておるか。」

報告者 「はい。石投げや跳躍をしております。」

王翦 「そうかそうか。

兵卒はやっと役立つようになったぞ。」


楚は王翦軍がまったく攻撃してこないので、後退を始めた。

王翦はその機会を見逃さず、全軍で追撃に移った。楚は敗走に敗走を重ねた。

王翦は追撃の手を緩めずき県の南で項燕を討取り、楚の城や街をほとんど平定した。

一年かけて楚王負芻を捕虜とし、さらに南下して百越の酋長を討伐して.服従させ、

郡県を設置した。


ここに南方の雄、楚は滅亡した。


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