第一話:劉邦の兄貴分



王陵という人は沛の人で、沛ではおおいに威勢をふるった任侠の人である。

学はあまり無かったが、気力を尊び率直にものを言う人であり、大いに声望があった。


劉邦は、信陵君や張耳などの大侠を慕い、張耳の下へ弟子入りするほどであったため、

当然、故郷の大侠王陵の下にも弟子入りし、王陵を兄貴に立てた。


しかし王陵は劉邦をかなり軽視していたようで、劉邦が挙兵するとこれを小馬鹿にし、

任侠仲間の雍歯が劉邦を裏切って豊に立て篭もったときに、これを援助した。

劉邦は、雍歯が裏切ったと聞くとこれを攻めたが、まったく歯がたたなかった。

このことから、劉邦は王陵と雍歯を深く怨んだ。この恨みは天下が平定されても消えることなく、

王陵は功績が大きかったのにもかかわらず、なかなか封地をもらえなかった。


その後、王陵は兵数千を率いて独自に軍事行動を起した。

王陵は宛付近を攻略し、そこを本拠地とし腰を落ち着けた。



劉邦はこのうるさい先輩・王陵を敢えて配下にしようとはせず、客として対等に遇し、

友軍という姿勢を貫いた。

項羽も王陵の人柄を知っており、彼を配下に迎えようと考えていた。

このように王陵は項羽・劉邦両人から特別視される一風変わった存在であった。


彼は、項羽が覇王となり、劉邦が漢王となるまでどこにも属さなかった。

しかし、彼は漢中から出撃して三秦(関中)を奪った劉邦から

ある依頼を受けるところから運命が一変するのである・・・


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