第一話:同月同日
沛県豊邑中陽里という所に、盧という家と劉という家があった。

盧家の主と劉家の主は親友で、しかも同じ日に男子が誕生した。

中陽里の人々は驚き、酒と羊肉を両家に贈って大いに飲み食いし

二人の嬰児の誕生を祝った。

この二嬰児は、(つなぐ・貫く・曲げて輪にするの意)と名づけられた。

邦は長じて高祖となり漢帝国を興した。綰は長じて長安侯太尉となり、最後は燕王となった。

盧綰と劉邦は机を並べて文字を習い、すぐに親友となった。

中陽里の人々は、両家の父が親友同士である上に子ども同士も親友になったことを

とても珍しがり、またも酒と羊肉を両家に持ち込み大いに飲み食いして祝福した。


二人は成人するといつも一緒に行動し、盧綰はいつも劉邦の傍らに侍した。

劉邦は武婆さんと王婆さんが経営している酒屋に行き、度々無銭飲食を繰り返した。

ある時、盧綰は劉邦が酔い潰れて寝ていた時に劉邦の上に竜がいるのを見た。

綰は驚き、店主や仲間にこのことを言い触らした。

綰やその仲間は非常に奇怪に思い、劉邦を畏れた。

その後、劉邦は法を犯し沛県から逃亡し沼沢地に身を隠した。

この時多くの仲間が劉邦を見捨てた。

蕭何・曹参・任敖・夏侯嬰・樊らは見捨てなかったが援助していただけであり、

盧綰だけは全てを捨てて劉邦につき従い、草莽の上で寝起きを共にした。


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