第四話:蒙家隆盛


蒙恬には蒙毅という弟がいた。

蒙毅もまた才能のある人物で、始皇帝に気に入られて上卿に取り立てられた。

彼は始皇帝が行幸する際には馬車に陪乗し、朝廷においては常に側にひかえていた。

兄は国外で大軍をあずかり匈奴の侵攻を防ぎ、弟は国内でいつも政策運営に加わっていた。

さらに二人には忠実で信義ありという名声が立っていて、

秦の有力将軍・大臣達でさえも敢えて蒙家の者と争おうとする者はいなかった。


しかし、一人だけ蒙家を嫉む者がいた。宦官、趙高である。

彼はあるとき大罪を犯し、始皇帝は蒙毅に裁判を任せた。

蒙毅は法を曲げようとせず、趙高を死刑とし官僚名簿から抹殺するという判決を立案した。

しかし始皇帝は趙高が仕事熱心であったのを思い出し、赦免してもとの官位に戻した。

この一件以来、趙高は蒙家を憎んだ。

彼は始皇帝の末子・胡亥に取り入り、蒙家を転覆させる機会を狙っていた。


そして趙高の復讐は、始皇帝の死と共に始まった・・・


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