第一話:蒙斉に蒙という人がいた。 彼は斉から秦へやってきて、昭襄王(始皇帝の曾祖父)に仕えた。 蒙は力量のある男で、上卿(御史大夫などの副総理クラス)にまで登った。 また戦術を立てるのが巧みで度々戦陣に立った。 蒙は昭襄王・孝文王・荘襄王・始皇帝の四代に仕え、軍権を一任されていた。 荘襄王元年には隣国韓を攻撃して成皋・陽など破竹の勢いで奪い、三川郡を設置した。 二年〜三年には、もう一つの隣国趙を攻め太原・楡次・新城など三十七の城を奪った。 しかし魏の信陵君(魏無忌)率いる五ヶ国連合軍が秦を攻め、蒙は打ち破られ兵は散りじりとなった。 始皇帝元年、晋陽で反乱が起こった。蒙は鎮圧を任され、見事反乱を平定した。 三年、蒙は韓を攻め十三の城を抜いた。 五年には魏を攻撃し、酸棗・長平・雍丘など二十の城を奪い東郡を設置した。 始皇帝の七年、蒙は病に倒れ亡くなった。 彼には有能な子と孫がいた。 子の名前は武、孫は恬と毅といった。 |