第三話:蜀卓氏


蜀の卓氏の先祖は趙の国の人であり、製鉄業で富を築いた。

秦が趙を滅亡させたとき、大富豪だった卓氏は捕虜となり財産を没収された。

卓氏は蜀へ移住させられることとなり、卓氏の当主夫婦だけで車を押して旅を続け

蜀の移住地へ向った。

一緒に強制移住となった人々は、わずかに残った財産を賄賂として吏員に贈り、

辺鄙な処へいかないよう頼み込んだ。

賄賂を贈った人々は、広漢郡葭萌県(梓潼の近く)に住んだ。


しかし卓氏だけは賄賂を贈らなかった。

そして妻と一緒に考えた。

「葭萌の土地は狭くて痩せている。

噂に聞いたが、びん山の麓は肥沃な土地が広がり、大きな芋が取れるという。

それならば一生飢える心配は無い。

びん山近くに住む住民は商売が上手だと聞いたから、商売を再開することもできるだろう。」

こうして卓氏は蜀郡臨きょう県まで連行されたが、非常に喜んだ。


卓氏は臨きょうに住むと、てん(現在の雲南)や蜀の住人を雇い、大掛かりな商売をし、

鉄鉱山で鋳造を行い、大いに利を得た。

あっという間に下男を千人使うほどに繁盛し、土地を買い集めた。

卓氏が沼地や狩場で大掛かりな猟をするときは、諸侯の狩りと見間違うほどであった。



時は下って景帝の時代のこと。

きょうには奴隷800人を抱えた卓王孫という富豪が住んでいた。

卓王孫は卓氏の子孫である。

彼の娘は司馬相如と駆け落ちをし、『史記』にも名を留めた。


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