第七話:儒者、随何
前回、項羽がたった3万の兵で漢軍56万を破り、劉邦を苦境に陥らせた話をした。
劉邦は、漢軍の形勢が日に日に悪くなってゆくので、苛々していた。
劉邦「ああ、飯がマズイ!!くっそ〜!!
何故ウチの将軍どもは皆、役立たずなのだろう!
天下の大事を相談できる者すらおらん。
はぁー・・・」
随何「漢王!!いまのお言葉、理解しかねますが!!」
劉邦「うん?なんだ、随何(ずいか)じゃないか。お前みたいな腐儒とは大事を語れん」
随何「お言葉ですが、大事とは何ですか」
劉邦「謁者(客接待をする下級役人)風情には大事は明かせんなぁ」
随何「大王!!今は存亡のときです。腐儒でも役に立つ時があります!!」
劉邦「そうか。そこまで熱心に言うなら教えてやろう。
・・・九江王黥布の動向が怪しい。
ヤツは独立を図っているに違いない。
ヤツを説き伏せ漢に参加させれば、項羽は必ず九江に兵を向けるであろう。
その間に、我々は巻き返せるではないか。
誰か、黥布を説き伏せることのできる者はいないかなぁ・・・」いっ、いやみだな〜
随何「大王!!なぜ私を用いないのです!!必ずや、黥布を味方にしましょう」
劉邦「ふ〜ん。腐れ儒者にできるのかな?まあ、駄目でもともとだ。随何にやらせてみるか」
随何「ありがたき幸せ!!」
こうして、随何は20人の使者団を組んで九江に向かうこととなった。
死は覚悟の上だった。
随何は九江の都・六(りく)に着くと、黥布の太宰(たいさい:王の食膳係)をつてに黥布と面会しようとしたが、なかなか面会できなかった。
切羽詰まった随何は、太宰に詰め寄った。
「私の話を聞いて、『納得できない』と九江王がお思いなら、私達20人の使節団を断頭台にかければよろしいでしょう。
そうすれば項羽に味方する九江王の誠意は認められ、今までの不穏な態度も全て赦されるでしょう。
逆に、私の持ちかける話が納得のいくものなら、漢王に味方すればよろしいでしょう。
私の首には、それだけの価値があるのです」
こうして、随何は壮絶な決意で自らの首を賭けたのであった。
黥布にしてみれば、
随何を殺しても、随何の話を受けても、イイ方向に転がるのである。
こんなオイシイ話は無いであろう。^^;
黥布は遂に随何と面会することにした・・・