薄姫は不思議な夢を見た。 寝ている自分のオナカの上に青い竜が乗っている夢を見たのである。 |
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不思議だなぁと思っていると、夜半に突然劉邦から呼び出された。 宦官に先導され劉邦の寝室へ行くと、劉邦がだらしない格好で寝そべっていた。 |
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劉邦 | 「おっ、お前が薄姫か。なかなかカワイイじゃないか。 まあ、こっちへ来い。」 |
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薄姫 | 「・・・・・・・・・。(恐る恐る近づく)」 |
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劉邦 | 「趙子児と管夫人からお前のことを聞いたぞ。 いままでたいそう苦労してきたらしいな。 でもこれからはわしの後宮で楽をするといい。」 |
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薄姫 | 「・・・実は・・・その・・・・・・。」 |
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劉邦 | 「ん?何だ?どんなことでも話してよいぞ。」 |
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薄姫 | 「実は、わたくし昨日不思議な夢を見ましたの。」 |
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劉邦 | 「ほほー。どんな夢だ?」 |
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薄姫 | 「・・・わたくしのおなかの上に青い竜が乗った夢を見たのです。」 |
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劉邦 | 「はっはっは!!!そうかそうか。それはな、お前が出世して尊くなるしるしだ。 今からわしがお前の為にその夢のしるしをあげよう。ははは。」 |
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こうして薄姫は劉邦に幸された。 そして、たった一度だけの寵愛で身篭った。 薄姫は男の子を出産し、恆(こう)と名付けられた。 薄姫は劉邦の子を出産したあと、劉邦に幸されることは稀であった。 劉邦は幼い我が子に会いに来るものの、薄姫の部屋で寝泊りすることはなく、 恆と遊ぶと帰っていった。 実はこの頃、劉邦は戚姫という美貌の女性にゾッコンで、 薄姫などは眼中に無かったのだ。 しかし薄姫は気にする様子も無く、幸せに暮らしていた。 子を授かった喜びでいっぱいだったのである。 薄姫にしてみれば、以前の人生と比べると今はまるで天国のようであったろう。 子を授かり、劉邦からは莫大な下賜品があり、周りの人に祝福された。 しかし辛苦を舐めてきた薄姫は、 「つけあがってはいけない。調子に乗ってはいけない。」と懸命に自分を諌めていただろう。 苦労人は大抵、とんでもなくヒネクレ曲がるか、謙虚になるか、どちらかである。 どうやら薄姫は後者のようである。 そして薄姫は辛い時に人から優しくされたことを思い出し、すべての人に優しく接した。 こうして薄姫はすべての人から愛され、幼い劉恆も共に愛された。 この薄姫の人柄が、自身と子の劉恆を救うことになるのだ。 |