第二話:大いなる苦難


秦の始皇帝と二世胡亥は人民を搾取し、労役に駆り立てた。

人々は疲れ果て、各地で大規模な反乱が起きた。

最大規模だったのが陳渉の反乱だった。

魏家の長、元のィ陵侯魏咎は陳渉の下に馳せ参じ、魏咎は魏王に任命された。

しかし、章邯率いる秦軍が魏咎の籠る臨済(りんさい:後の陳留)を包囲すると、

魏咎は人民の為に降伏条件を取りまとめさせ、条約が決まると自決した。

このとき弟の魏豹・薄姫の母は城外へ逃れた。魏豹は項羽の傘下に入り、数千の兵を与えられた。

魏豹はよくやった。魏の二十余城を降し、魏王に立てられた。

項羽が覇王となり諸侯に行賞した際、魏豹は西魏王に封じた。

しかし漢王に封ぜられた劉邦が反旗を翻し三秦を攻め落とすと、魏豹は国を挙げて漢に帰順した。

劉邦と共に項羽留守中の彭城を攻めたが、

超人的武勇の項羽が救援に駆けつけ漢連合軍は大敗北を喫し、陽まで退却した。

このとき、魏豹は親を看護するとの名目で帰国を申請し、

本国に帰るとすぐさま黄河の渡しを破壊し漢に叛き項羽と通じた。(うむむ、目まぐるし過ぎる展開だ)


魏豹が栄達したのを見、薄姫の母は娘を魏豹の後宮に入れようと考え、

許負という占いの名手に娘の人相を診てもらった。

許負は、「この娘は天子を生むに違いありません。」と占い、

薄姫の母は大いに喜び、娘を無理矢理後宮へ送り込んだ。

魏豹は占いの噂を聞き、薄姫を寵愛した。


しかし、この寵愛は長くは続かなかった。

魏王魏豹は韓信・曹参らに惨敗し、逮捕されてしまったのである。

魏咎の後宮にいた女性もみな逮捕された。

薄姫は奴隷の身分に落とされ、

漢宮中の機織り
(はたおり)部屋に入れられて強制労働させられる羽目に陥ってしまった。


暗い出生を背負い、母には後宮に無理矢理入れられ、挙句の果てには奴隷に・・・。

「いったい、私の人生って何なのだろう・・・」

薄姫は自分の運命の悲しさに、機織り部屋で幾晩も幾晩も泣いたであろう。



そして、薄姫の苦難は十ヶ月目を迎えた・・・


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