第七話:諫言【中級】


あるとき、文帝は自分の陵墓である覇陵に群臣を引き連れて行った。

この覇陵は、史書によれば西側・北側が崖になっており地勢が険しい所であった。

文帝は帰る際に茶目っ気を出し、西側の険しい坂道を馬車で一気に駆け下りようとした。

おうはびっくりし、お召し車の横へ馬を並べ御者が持っていた手綱を引きとどめた。

文帝は袁おうをからかって言った。

文帝 「袁将軍よ。おびえたのかね?」

おう 「臣が聞いておりますに、『英邁な君主は幸運を頼みにして危険を冒さない』

という言葉があります。

陛下は六頭の馬が牽く馬車で険しい坂を駆け下りようとなさいますが、

もしも馬が何かに驚き馬車が転覆した場合、高祖(劉邦。文帝の父)さまの廟の祭祀や、

薄太后(文帝の母)さまへのご孝養はどうするのです。

陛下の気ままでお命を粗末にされるのは勝手ですが。」


この痛烈な袁おうの諫言に文帝は一瞬むっとしたが、すぐに思い直して自分の過ちを認めた。


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