第二話:助長補短


おう 「陛下は、周丞相をいかなる人物とお考えですか。」

文帝 「彼は父上に従って天下を取り、父上亡きあと呂氏を倒した。

社稷の守護者たる臣であろう。」

おう 「絳侯(周勃)さまはいわゆる功臣であって、社稷の守護者たる臣ではありませぬ。

社稷を守る臣は、主君と共に生き共に滅びる者であります。

呂氏が権力を握った頃、劉氏の血脈は絶える寸前でしたが、

絳侯さまは太尉として兵権を掌握しながらも、兵を挙げ筋を正すことはできませんでした。

呂后さまが亡くなられた後、大臣がたが協力して呂氏を滅ぼしたときに

たまたま絳侯さまは太尉として兵権を握っておられ、

いわば偶然成功の機会にぶつかられたのです。

ですから功臣ではあっても、社稷の臣ではありませぬ。」

文帝 「・・・・・・。」

おう 「周丞相は陛下に対しても傲慢な態度で、逆に陛下は下手に出ていらっしゃいます。

これでは主君と臣下の礼が損なわれております。

臣は陛下の為に憂うべきことと愚考いたします。」

文帝 「・・・なるほど。お前の言わんとすることはわかった。

下がってよいぞ。」


その後、朝廷では文帝が威厳のある態度を取るようになった一方、

周勃は次第に畏れ謹む態度をとるようになった。

周勃はこれが袁おうの献策だと知ると、面目を潰された気がして袁おうを憎むようになった。

あるとき、我慢できなくなった周勃は遂に袁おうに直接言ってしまった。

周勃 「わしはお前の兄の袁かいとは仲がよかった。

しかし小僧っ子のお前が、満座のなかでわしに恥をかかせるとはどういうことだ!」

おう 「別にわたしは間違ったことはしておりません。」

周勃 「・・・!!」

結局袁おうは最後まで謝らなかった。


おうと周勃は仲違いをしたように見えた。

しかし周勃がそう思っていただけで、袁おうはまったく気にしていなかった。

おうは即位したばかりの不安定な皇帝の座を、しっかりとしたものにしたかっただけだからである。


周勃は袁おうを怨んだ。

しかし、無実の罪を着せられ牢にぶちこまれた時、彼は袁おうの本心を知ることになる・・・


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