第五話:良薬は口に苦しby子房


秦の三世子嬰が降伏すると、劉邦は秦の宮殿に入った。

張良は劉邦の性格を知っていたので、とても嫌な予感がした。


劉邦は馬や犬をこよなく愛していたので、秦王宮内で飼われていた立派な馬や犬を見て感動し、

宝物庫の財宝や立派な宮室を見てはニンマリしていた。

しかし彼の本領発揮と言えば、なんといっても性欲であった。(爆

劉邦は後宮へ雪崩れ込み、「いかん!!」とばかりに樊かいと張良が全速力で後を追った。

千人以上もいた宮女を前にして、劉邦は目も眩む思いであった。

「ああ!ワシは今天国にいるのか!」と。(爆

しかし、後ろから男臭い樊かいと婦人のような張良が血相を変えて追いかけてくる。


劉邦は追いかけてきた二人に言い放った。

劉邦 「ワシは今日からここに住む!」

かい  「いけません!必ずこの財宝女性で沛公は堕落いたします!

さあ、覇上の軍営に帰りますぞ。」

劉邦 「樊かい、堅いことを言うな。いいではないか。ワシはここが気に入ったぞ。」

かい  (こりゃダメだ…)と、とにかく、力ずくでも覇上にお戻しますぞ。」

劉邦 「石頭では話にならん。子房、お前もここが気にいっただろう?」

張良 「ははは。沛公らしいですな。しかし、ここはいけませんな。

そもそも秦が道に外れたことを行ったから、沛公がここに来れたのではありませんか。

沛公は天下の為に悪逆非道を取り除いたのです。

それなのに悪逆非道の遺した快楽の中で暮らすのは、

あたかも暴君桀を助けて残虐を助長することと同じではありませんか。

今は質素を実践するときです。女性にうつつを抜かしているときではありません。

それに忠言は耳に逆らっても行いには利益があり、

毒薬(毒素で病を治す薬)は口に苦くても病には益があるものです。

どうか樊かいの言葉をお聞き入れなさいますように。」

劉邦 「そっ、そうか?!  でも、この女性たちを放っておくなんて・・・」

かい (ムカムカ)沛公!!!!」

劉邦 「Σ( ̄□ ̄;) わかった、わかったよ。

さ、さあ、覇上へ帰るぞ。」


こうして(ホントかよ^-^;;)張良と樊かいに諌められ、劉邦は破滅を免れた。

そして張良らの勧めで咸陽の宝物庫には厳重に鍵をかけ、一切私物化しなかった。

(しかし、蕭何だけは密かに丞相府の図書文書戸籍などを全て接収していた。)



劉邦は前代未聞の功績を打ちたて、浮かれていた。元々、少々軽はずみではあったが…。

張良・樊かいら直諫の士が丁度その場にいるときは、その場で修正させることができたが、

いないときはどうしようもなかった。

この劉邦の軽はずみさが、自分を絶体絶命へと追い詰めるのである・・・


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