第六話:釋之持議平


ある時、高祖廟の台座についていた玉環が盗まれた。

犯人が逮捕され、怒った文帝は廷尉に犯人を引き渡し事件を裁かせた。

張釈之は法に則り、宗廟の調度品を盗んだ者として犯人を死刑の上晒し者にすると判決を下した。

この判決を見た文帝は激怒した。

文帝 「犯人は無道にも先帝さまの廟の調度品を盗みおったのだぞ!

わしが犯人を張廷尉に引き渡したのは、

犯人を一族もろとも殺す判決を下させるつもりだったからだ。

それなのに廷尉はわしの意に逆らい法律通りの判決を下した。

これでは、わしが先帝の廟に恭しく奉仕したいという気持ちと大違いではないか!」

張釈之は冠を脱ぎ、頓首して言った。

張釈之 「法の規定ではこれで充分であります。

死罪は死罪でも、反逆の程度の違いで差をつけなければいけません。

宗廟の調度品を盗んで一族皆殺しならば、

もし長陵(高祖陵)を掘り返す愚民がおれば(盗掘のことを指す)

陛下はどのような判決を下すおつもりですか。」

文帝 「・・・・・・。

・・・張廷尉の意見、尤もである。

この件、太后さま(薄太后)と相談して決める。」

張釈之 「ははっ。」


文帝は母の薄太后に張釈之の意見を聞かせると、薄太后は張廷尉の意見を支持した。

結局、文帝は張釈之の判決を認めた。


皇帝の恣意を許さない、張釈之の名声は天下に響いた。

条侯周亜夫(周勃の子)と山都侯王恬開は、

張釈之の公平さを貫く姿に深く感じ入り、親友の交わりを結んだという。


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