第四話:直言の人

罪を赦された季布は、宮中に召し出され、劉邦に謝罪した。

劉邦 「季布か、久しぶりだな。お前が項羽配下だった頃、

俺はお前の名前を聞くだけで逃げたなぁ。まあ、終わったことはもうよい」

季布 「ありがたき幸せ」

劉邦 「うむうむ。お前のような剛直の人物が親衛隊だったら、誰も手出しできんだろう。

郎中(天子に近侍する護衛のこと)をやってみないか?」

季布 「はは〜〜。ありがたき幸せ」


こうして、季布は漢帝国に仕えることとなった。



その後、漢では劉邦が死に、呂后が政権を握った。季布は少し昇進し、中郎将(護衛隊の隊長)になっていた。

そんな時、強盛を誇っていた匈奴から無礼な手紙が届いた。


呂后さまへ

「あなたは、最近夫を亡くしたとか。私も、妻を亡くし、寂しい毎日です。

どうです、お互い慰めあいませんか?」

冒頓単于より



これを見た呂后は怒り狂った。将軍たちを呼びつけ、匈奴に攻め入る協議をした。

呂后の義理の弟だった将軍樊(はんかい)は呂后の気持ちにへつらって、

「私に10万の兵を授けて下されば、匈奴なぞひとひねりですわい」と豪語した。



しかし、季布が進み出て言った。


季布 「樊将軍は、斬罪にすべきです!!」

呂后 「な、何じゃと?お前気が狂ったのか?」

季布 「高祖さま(劉邦)が40万の兵を引き連れ、匈奴を攻めたことがありました。

しかし平城で匈奴に包囲され、陳平どのの策があたらねば危うく戦死なされるところでした。

いま、樊将軍は10万の兵で匈奴を蹴散らすと言います。

これこそ、呂后さまのご面前で嘘をつくというものです。

そもそも、秦帝国は匈奴対策に人民を駆り出し過ぎたために、陳勝らが反乱を起こしたのです。

その反乱にやっと高祖さまが決着をつけ、未だ人民の傷は癒えていないと言うのに、

将軍が「匈奴を攻める」とへつらうのは、天下を動揺させようとしているとしか思えませぬ!!」


これを聞いて、呂后はさらに怒った。協議はすぐに解散となり、将軍たちは呂后の怒りを恐れた。

しかし、呂后は女一人で政治を切り盛りする程の人物だったので、一時の感情では動かない人だった。

季布の発言を聞いて、心のなかでは「それが道理である」と思っていただろう。

ただ、樊の面子を立てて怒ったのであろう。



この事件で季布は認められ、さらに昇進してゆく。

そして、さらに名声を高めていくのだが、それには秘密が・・・


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