第一話:東陽徐州臨淮郡はかつて陳国であった。 周の武王が、舜帝の末裔であった満を陳に封じ長女の大姫を娶せたのが始まりである。 胡公満より二十三世で陳は楚に滅ぼされた。 その風俗は祭祀を好み、巫が盛んであったという。 秦の始皇帝の時代。 その臨淮郡の東陽県というところに、陳嬰という男がいた。 家は貧しかったが、現地採用の役人として東陽県で働いていた。 彼は穏やかな性格で、滅多に人を批判することがなく皆に慕われていた。 また孝行者で、県内では「長者である」として信望があった。 今回はこの長者陳嬰を追ってみたいと思う。史記での記述は少ないが。 |