丹砂 〜干宝『捜神記』より〜 |
臨に廖という家があった。 代々長寿であったが、引っ越すと子孫たちは早死にするようになった。 廖氏が住んでいた家に入った人々は、やはり代々長生きするようになった。 臨の人々は、家のせいで長生きするのだということは解ったが理由がわからなかった。 ある時、この家の井戸水が赤いのに気がつき、井戸の周りを掘ってみると 丹砂が数十斛も出てきた。 つまり、丹砂の溶液が井戸に染み出て、人々は長寿を得ていたのであった。 |
丹砂 赤い鉱石で辰砂とも呼ぶ。硫化水銀(HgS)である。朱肉や赤色顔料にも使われている。 丹砂には鎮静催眠効果があり、殺菌作用があることが知られている。 わずかに毒性があるらしく、腎臓や肝臓に蓄積される。 水には殆ど溶けない。 熱すると水銀の蒸気が発生し、蒸気を冷やすと水銀(液体)が得られる。 水銀蒸気は毒性が強く、肺に入ると呼吸困難や腎障害が起き脳神経が犯される。 液体水銀の経口摂取では毒性は殆どない。 (私には鉱物や薬品の知識は殆どありません。間違いあればご指摘ください) 古代中国では、丹砂は不老長寿の源として考えられていたようで、 怪しげな方士たちの秘薬として度々史書に登場します。 始皇帝など不老不死に憧れた皇帝たちは、丹砂を服用していたようです。 また丹砂から精製される水銀は、始皇帝陵にも使われています。 史記に「始皇帝の墓室内部に河や海を模って水銀を流し込んだ」と記述があり、 史実であるかどうか1981年探知機で内部調査したところ、 水銀蒸気の拡散と水銀の川や海の存在が判明しました。 ちなみに、日本で「丹」という字が使われている地名は、水銀に縁のある場合が多いようです。 |