落頭民 干宝『捜神記』より |
秦の時代、南方未開の地に「落頭民」という部族があった。 その部族は、なんと首をとばすことができたのである。 その部族には祭りの儀式があり、その儀式を「虫落」と呼んでいたため、 「落頭民」という部族名が付けられた。 下って三国の呉の時代、将軍の朱桓(字は休穆。呉郡呉の人。兵士に絶大な人気があった)は一人の女中を雇った。 しかし、その女中の首は、毎晩寝た後に飛んで何処かへ行ってしまうというではないか。 耳を翼代わりにして飛び、夜明けが近づくと胴体へ帰ってくるという。 このようなことが幾度もあり、同じ部屋で寝ていた他の女中達も不審がり、 夜中に明かりを灯してみると、やはり胴体だけで頭がなく、体は少し冷たくなっており、 息はどうにか通っている程度であった。 そこで他の女中達は胴体に布団を被せて、首が帰ってきても胴体と合体できないようにした。 明け方、首が帰ってきたが、布団に邪魔されて胴体につくことができない。 しばらく布団の周りを飛んでいたが、力尽きて地上に落ちてしまった。 首は、大層悲しそうに溜息をつき、しばらくすると今にも死にそうな様子になった。 女中達が胴体に被さっていた布団をどけてやると、首は飛び上がって胴と合体した。 そして間も無くスヤスヤと寝息を立てはじめた・・・・・。 朱桓は家の女中達からこの報告を受け、大変な化け物を雇ってしまったと驚き、 恐ろしくなって問題の女中を解雇し、自由の身分にしてやった。 後になって朱桓が友人や物知りに聞いて調べてみたところ、 それが彼女の部族の天性であると知ったのだった。 当時、南方へ征伐に赴いた将軍たちも、時折「落頭民」を捕虜として手に入れた。 呉の人々は、この部族に大いに驚いた。 ある者は、胴体に銅盤を被せ、首が戻ってきても合体できないようにしたが、 結局首は銅盤に邪魔されて胴体と合体できずに死んでしまったという・・・。 |
・・・ベトナムや交州って人間じゃなくて怪物が住んでたんですか・・・? ・・・なんとも、酷い書きようですな。 でも、朱桓が「落頭民」の女中を自由の身にしてやった件は、正史での朱桓の性格をきちんと踏襲してますな。 |