第四話:無実の罪


竇太后はしつ都を陥れ、罪を着せて中尉を免職とし郷里へ帰らせた。

景帝は竇太后がしつ都を殺すことを恐れ、しつ都の自宅で雁門郡の太守に任命し、

自宅から近道で雁門郡へ直行させた。さらに何かとしつ都の為に便宜を図ってやった。


在任三年、辺境であった雁門郡は大いに治まり、悩まされていた匈奴の侵攻も無くなった。

なぜなら後二年にしつ都は匈奴を討伐し、

これを完膚なきまでに打ち破り「しつ都鬼神の如し」と恐れさせたからである。

匈奴ではしつ都の人形を作り騎兵に射当てさせたが、

皆恐れて命中させることができない有様であった。

匈奴は雁門郡付近から全面的に兵を引き、しつ都が死ぬまで雁門郡に近づこうとはしなかった。


竇太后はそれでもしつ都を殺そうと機会を窺っていた。

結局、遠く宮中から法の上で死刑にする口実を見つけ、むりやりしつ都を罪に陥れた。

景帝はしつ都を救うべく、「しつ都は忠臣です。」と弁護したが、

竇太后は、「では臨江王(劉栄。前話参照)だけが忠臣でなかったということですか。」と言った為に

景帝は何も言い返せなくなった。


しつ都は無実の罪で斬罪に処せられた。

しつ都の亡骸は故郷楊県に帰り、楊県の東南二十里に葬られたという。


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