第二話:寡婦清


益州巴郡は、元は南夷と呼ばれる異民族が住む地であった。

土は青黒く沃野であり、金・銀・銅・水銀・鉄などの貴金属を産出し、

毛織物や熊・狐・狸の皮衣もとれた。

巴・蜀は物資を外から移入しなくても自給自足できる経済基盤を持ち、

巴・蜀で余った物品を中原へ移出するほどであった。


その巴郡に住む清(姓不詳。女性)は、何代も続く商人の家に生まれた。

清の家は、祖先がふ陵で水銀の鉱脈を発見してから代々鉱山経営で利益を独占し、

巴郡で最も富み栄えている一族だった。

清は早くに夫を亡くし寡婦となったが、再婚もせずに独りで業務を切り盛りし、財産を一層増やした。

その財産のおかげで、寡婦だからといって人に侮られたことは一度も無かった。


秦の始皇帝は彼女の勢力を憚り、女性ながらも客分として扱った。

そして清の貞節を認め、女懐清台を築いてやった。

女懐清台はふ陵の人々に「貞女山」と呼ばれて親しまれ、

唐三代皇帝・李泰(649年即位)の治世まで、約900年以上残存していたようである。


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