■訳

十五歳で徴兵されて従軍し、八十歳になってやっと故郷に帰ることができた。

道で会った郷里の人に、「我が家には誰かいるかね。」と聞くと、

「ずっとむこうに見えるのがあなたの家ですよ。」と答えてくれた。

行って見れば松やヒノキが生い茂り、土饅頭の墓が幾つも重なりあっている。

ウサギやイヌの通る抜け穴から我が家に入ると、キジが天井の梁から飛び立った。

庭には野生の穀物が一面に茂り、井戸の周りには野生の葵が生えている。

早速穀物をついて飯をつくり、葵を摘んでスープをつくった。

飯とスープはすぐにできたが、食べてくれる人は誰もいない。

門から出て遥か東方を眺めれば、涙はとめどなく流れ着物を濡らす。


この漢詩も詠み人知らずである。

十五歳で従軍し、八十歳になって故郷に戻った老兵の歌である。

華々しい戦果をあげた英雄の影では、こういった人々の悲哀があったのだろう。

これらの詩と正史を読むと、戦争とは何かを考えさせられる。



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