項羽 |
虞美人 |
項羽 力は山を抜き、気は世を蓋う。時利あらず、騅逝かず。 我が力は山をも抜き去り、我が気迫は天下を包み隠すほどだった。しかし、時は不利となり、愛馬の騅(すい)も進もうとしない。 騅逝かざるをいかんすべき。虞や虞やなんじをいかんせん。 騅が進もうとしないのはどうしたことか。虞よ、虞よ、お前を残して行くのは心残りだ。どうしたものか。 虞美人 漢兵、已に地を略し 四方は楚歌の聲 漢兵はすでに我が楚の地を占領し、四方からは楚歌が聞こえてくる。 大王、意気尽きたれば 賎妾何ぞ生を聊んぜん 大王さまの溢れる気概が無くなれば、この賤しい私はなんで生きていけましょう。 | |
この歌は、垓下に追い詰められた項羽が、漢軍から聞こえてくる楚歌に愕然とし、 「四面楚歌」を悟って、愛する虞姫におくった歌である。 虞姫は項羽に続いてこの歌を繰り返して歌ったという。 虞姫の歌は、項羽の歌に応えて歌ったものだということだが、 偽作の可能性が高いという。陸賈『楚漢春秋』に載っている。 虞姫は『史記』の記載がたった一箇所ということもあり、 虞美人草(ひなげし)として今に名前が残るのみである。 民間伝承では、安徽省霊璧県郊外にある塚が虞美人の墓であるという。 |